自衛隊の中東地域への派遣は日本の安全保障に深刻な害をもたらす②
北大生のISIL志願は忘れられたのか?
安倍内閣による自衛隊の中東派遣で本当に心配なのは、日本国内でのテロリスクである。
そもそもイスラム国は壊滅したのであろうか?
北大生によるISIL志願事件があったことが忘れられたわけではあるまい。
当時、毎日新聞は記事のタイトルでこう打った。
『イスラム国「非日常」への逃避か 北大生、疎外感募らせー毎日新聞』<
この事件から約5年経った今(2019年12月)、果たして若者の疎外感を募らせる社会的環境は改善されたと言えるのか。否、根本的な解決は何もなされていない。イスラム国はネットを使ったプロモーション戦術に長けており、中東外からも戦力を集めていた。元自衛官の人間も戦闘に参加していたし、ウエストミンスター大学を卒業したような高学歴な人間さえ、戦闘員として参加していた組織だ。
そんなイスラム国の驚異は本当に去ったと言えるのか?
仮にイスラム国の幹部がほぼいなくなったとしても、資金を調達する力のある限り、今もどこかで潜伏していることだろう。第二第三のイスラム国などいくらでも発生しうるのが今の中東の情勢なのだ。
東京はとりわけて危険な都市になる
そもそもイスラム国はアメリカが生んだとすら言われる存在だが、アルカイダといいイスラム国といい、指導者を倒せばそれで終わるほど彼らは甘くはない。直に新しい指導者を立て、より強くなって活動を再開するのが彼らの非常に厄介なことである。イスラム国のプロモーションから見て優れた頭脳がいることも容易に想像ができる。そんな彼らが果たして「日本に置いた工作員」を引き上げさせているのか。ここは大いに疑問が残る。
加えて依然として日本に付きまとう閉塞感や孤独感など、北大生の時のように鬱屈した精神を抱えた若者にコミットした戦略をとられた場合、日本国内でもテロが起こる確率は高まる。その場合、テロによる宣伝効果を最大化させるには、やはり東京が狙われることになるだろう。
巨大都市はテロに対しては脆弱であり、とりわけ世界一の人口を誇る東京は宣伝効果も高い恰好の都市だ。
小泉政権以降、中東との関係に亀裂が入り、安倍政権で更に関係悪化が進んでいるが、果たして自衛官の中東派遣は日本に何のリスクもない派遣なのであろうか?
そこは今一度考えた方が良いだろう。