日本人は再分配が嫌い⇨それは結局仕事ぶりにも現れている件㊀

少し前、現代ビジネスでは坂本治也教授の「日本人は実は助け合いが嫌いだった」という記事が話題になった。本文中では「日本人は共助や公助を嫌って自助自己責任を強調するのが日本人の特徴と位置付けている。それは台風19号でも一部の反応を見る限り、それは間違いなさそうである。

もちろん日経新聞の「国頼みの防災から転換を」の記事は炎上しているし、大半はそうは思っていないわけだが、やはりこう考える層は一定層いるのが現実のようだ。
さて改めて「公助や共助を嫌う」この自己責任というモンスターは、よくよく考えてみると日本人の仕事ぶりにも影響するのではないかと思い至る。公助や共助の考え方を嫌う体質は結果的に生産性を落とし、労働時間を長時間化させる遠因にもなっているような気がするのだ。

一人で仕事を抱え込む体質に・・・

仕事の価値や生産性を向上させるのは、一言で言えばチームプレイである。例えばIT系の仕事を取ってみると、WordPressのテーマ改修であるとか小さなプラグイン作りといった一人でも出来そうな案件というのは、言うまでもなく単価が安い。逆に大きな案件に関われば単価も上がるし、そこでは当然チームで動く必要が出てくる。チームで動くなら生産性を高める手段は概ね、次の3つが必要だ。
㊀徹底した役割分担
㊁業務のスキーム化
㊂業務の負荷分散
細かく見れば色々とあるのだろうが、大別すればこの3つを中心に考えていくことになるだろう。
欧米の場合は役割分担を徹底し、契約外の仕事はやらないという方向に行ったようだが、少なくとも契約社会の発達していない日本ではあまりそうした働き方は根付かないだろうから、共助の考え方をベースに組織運営した方が上手くいくだろう。負荷を分散させるには、誰がどんな仕事をどれだけ抱え、それを更に当人にしかできない仕事と他の人にもできる仕事の仕分けをするのが有用だ。業務仕分けをした上で個々の作業手順を明瞭化していけば、有給の取得をしやすい職場を作っていくことができ、かつ「誰かが病気になっても止まらない組織」を作ることができるだろう。
しかし、自己責任の考えが進めば進むほど、出来上がる社員は「一人で仕事を抱え込む」というものではないか。結果として有給は取り辛くなり、残業時間は増え、息苦しい職場が作られていく。で、一人で仕事を抱え込む人に「何か手伝いましょうか?」とか「貴方の持ってる●●の仕事を手順化して他の人にもできるようにしませんか?」と言っても、たいてい断られることが多い。
「その仕事をスキーム化すれば当人も有給取りやすいチームになっていくのに・・・」と思っても、実は当人にとっては有給を取る事より、その仕事を自分に独占させておくことが重要であったりするので、全く響かないのである。
そもそも業務のスキーム化や負荷分散はある種の、小さな再分配の考え方に基いている。
例えば手順を明瞭化してをしていくことは公助的な「みんながその業務をできるようにする」というものであるし、多く抱え込んでいる人の業務を仕分けして負荷を分散しようというのも、ある種の共助である。
仕事はチームプレイで価値を高めていくものであるとは言ったが、実は業務をたくさん抱えている人に限って「自分の業務をスキーム化されたくない」という欲求を持っており、自分の業務の再分配を嫌う傾向が少なくない。
これは自己責任論の帰結というより、承認欲求や自分を解雇させないための地位保全の側面が大きいが、なんにしろ「再分配を嫌う体質が仕事ぶりにも現れている」というのは、過去に所属した企業を振り返っても思うものが多くある。

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