送別会と送別品に感じる儒教的な嫌らしさ2️⃣

静かに静かに辞めたい私

会社都合退職(解雇/雇い止め)で送別会を開かれるのも心理的負担になるが、自己都合であっても気分は楽では無い。
勿論、解雇/雇い止めに比べれば「開かれて嬉しい」と思う人も幾分増えるが、オリコンキャリアでの調査では20〜40代の男女約800人で自分の送別会を嫌がる人間が約66%いるのだから、やはり心理的な負担になるのだろう。

送別会と言えば送別される側は間違いなく「このような会を開いていただきありがとうございました。今後、新しい仕事で頑張ります。」みたいな挨拶をしなければならない。
ある種の罰ゲームなわけで、これが嫌だから送別会を固辞しようとすると「タダでご飯を食べられるんだから」と揶揄される。
そう考えると、送別会は確かに抑止力として機能している。
確かに仲の良い人との宴会なら楽しいのだが、職場の中には勿論嫌な上司がいたりとか、たいして接点の無い人も呼ばれている。
普段の飲み会ですら浮くような気質の人の場合、自分が主役になっても浮くのか、あるいは聞かれたく無いことをたくさん聞かれると思うと、まぁ行きたくは無い。

自分の送別会を嫌がるケースにも色々ある。最後のツイート主はどちらかと言えば『親しい人間とやる送別会』は嫌では無いが、結局『会社の送別会』は関わりたく無い人、普段関わりの無い人も混じることが嫌なのだと見る事も出来る。加えて、聞かれたく無いことを聞かれる不安がある事も見えるだろう。
全般的に言えるのは、やはり静かに辞めたい人もたくさんいると言う事である。

だが断るには胆力が要る

無論、送別会を嫌がる事=断れる事でも無い。
と言うより、自分の送別会を断るには意外と胆力が必要だ。
勿論、最初に声を掛けられた時点で辞退する事も出来る。
しかし、なんだかんだで最後はドタキャンに持ち込むしか無い事も少なくはなかろう。
ちなみに私の場合、最後はメールバトルに発展した。

最初に声を掛けられた時に辞退したい旨を申し上げたが、同僚から「やらないって事になったら係長が許さないと思うよ」と言われ、渋々了承した。
「まぁ2時間程度なら」と思って渋々その場は取り繕ったが、私が休日の時に「今日店を決めるから行かない人は言ってね。ちなみに3時間だから。」とメールが届いていたのを見た時、思わず戦慄したものである。
3時間拘束されると確認した瞬間、バックレる為の言い訳を考え始めた事は確かだ。
「幸い南武線は治安悪いし、適当に暴力事件で告訴された事にしてバックレるか」とか本気で考えたものである。
結果としてはツイッター相互さんからアドバイス頂いた残業代請求という切り口にシフト。
「じゃあ貴方がキャンセルした分、キャンセル料が掛かるんですけどね。いや、勿論貴方に請求はしませんが、法的にはどうなるんでしょうか。」
「今回は社費でやるから税法上どうなるかってことで良いですですか。それはお答え出来ないんです、もし私が飲み会に行かない事で民法上の不法行為に該当するというのなら、弁護士に相談してください。」
・・・と、まぁ暑ーいバトルになったわけである(勿論バックれは決行した)。

退職贈答品に見られる儒教的な嫌らしさ

最後に退職贈答品についても触れてみたい。
「大橋さん、チームで贈り物する事になりましたが、何か欲しいものありますか?」
「無いから結構です」
「いや、もうお金集めちゃったんで、欲しいもの決めといてください」
「(欲しいものあるならとっくに自分で買ってるんだが・・・)」
という具合でやり取りを交わしていたのだが、どうもこれは購買担当には伝わっていなかったらしい。
というか、私が断ったのは今まで自分が集金される立場だった時、納得がいかなかったからだ。

そう。実際問題として、私もあまり関わりの無い人のために集金されるのは納得が行かなかった。
そして、私が退職するに当たって集金されたメンバーの中にも納得の行っていないメンバーは絶対いると確信している
「いや、大橋さん要らないなんて聞いてないから買っちゃったよ。受け取ってくれるよね?」
「は?今度聞く時までに欲しいもの決めろって言われたから、改めてお金は各個人に返すようお伝えするつもりだったんですが、買っちゃったんですか?
ひとまず領収書だけください。その上で考えます。」
という事で贈答品を巡ってもまた、喧嘩をしている。
送別会の欠席の意思表示をするとともに、各人から回収したお金は返金するように伝えたところ、まさかの展開で困惑してしまったのであった。
正直なところ、送られる側としては「欲しいものは特に無い」と言っている以上、贈られても困ってしまうのが本音なのだが、集金される側も実は「どうせ感謝されるのは直接渡す人だけ」というネガティヴイメージを持っていたりする。

一体誰のための贈答品なのだろう。
得てして、こうした集金をするのはその職場内で発言力の高い人が行うことが多いのではなかろうか。
オフィスで言うなれば、お局さんと言われる人が集金係になっていることが多いように思う。
ダイバーシティが叫ばれる今、本当にダイバーシティをやるなら個人間で贈り合えばよく、こうした集金をする贈答品システムは言わば、集金する人の権威性を示す儀式として行われる。
集金する人は職場内における発言力が高い。そんな人を敵に回しては後が怖いので、なんとなく空気を読んでお金を出してしまう。
一体誰のための贈答品なのか。そこを突き詰めた時に、その贈答品の中にさえ、朱子学的な嫌らしさを痛感し、嘆息するものである。

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