市役所の窓口委託はかえって無駄なコストがかさんでいる件⓶

意思決定のロス

そもそも市役所窓口の委託などやったところでコスト削減など出来るはずもない。
コア業務を手放せず、権限の委譲も行われないのであれば、イレギュラーが発生した時に市役所の職員自身が表に出ざるを得ない。
その上で委託先の人間のタイムカード管理までやっているとなれば、それは偽装請負としてはレッドカードであるまいか。
労働者側にとっても正規職員とは賃金や福利厚生での格差が発生するのだが、その割に市民からのクレームをよく受けるようになるではモチベーションが上がることはない。
離職率は高まることも勿論だが、何より不満を抱えた従事者を増やすことは将来的な不正を起こされるリスクを増やすことになる。

不正のトライアングル理論

さぶれSMBCソースコード流出事件などはSESやSMBC以外の企業にも教訓を与えている。
委託先の人間と市役所の職員とで賃金差や福利厚生に差があるわけであるが、少なくとも委託先企業にいて昇給を見込める可能性は限りなくゼロに近い。
市役所は個人情報の宝庫だ。まして窓口であれば猶更である。窓口でクレームを受けながら対応している自分が、バックヤードにいる正規職員と比べて遥かに待遇が悪い。これは不正のトライアングルに於ける動機を形成する材料となる。動機は大抵が正当化もセットで行われる。現場にもよるが、委託職員が不正をやる機会があるか無いかと言われれば、概ね「ある」の一言に尽きるのではないか。
だからこそ委託先の労務管理まで何故か市役所側で行うなどと言った可笑しなことも起こるのであり、余計なコストが掛かるのは当たり前なのである。

正規雇用者の仕事と委託の在り方を見直した方が良い

何も市役所窓口に限ったことではないが、本来アウトソーシングが向いた業務はプロジェクト型業務である。
「ある期間が終われば必ず終わる」
「物が完成すれば契約は終了する」
こうした「ゴールのある仕事」に対しては、アウトソーシングは有効だ。専門特化した集団に業務を任せ、自身はコア業務に専念することは、プロジェクト型業務には有効である。
一方で「ゴールの無い仕事」にアウトソーシングは向かない。まして市民を相手にする仕事は直接雇用者で無ければ勤まらぬ。市役所窓口だけでなく、図書館の司書にも同じことが言えよう。
市民と直接接する仕事の人間は市民から要望を受け、時にその要望が市全体の発展に繋がる、市民全体の満足度向上に繋がるかなどの視点を持ちながら業務に当たらねばならない。
勿論ゆくゆくは市役所の窓口は完全にペッパー君にするであるとか、窓口そのものを撤廃し、申請・相談はオンラインのみにしていくと言うのであれば話は別である。ゴールのある仕事はアウトソーシングが向いている。市役所の窓口を完全に撤廃する未来が見えたならアウトソーシングすると良い。それが可能なのであれば、の話だが。
それはそうと、市役所にもSESの人間が(身分を詐称しながら)常駐しているが、システム運用の仕事をSIerに丸投げするのは考え物だと思うぞ。
システム運用の作業はほぼ専門的な知識が必要なものはない。インシデントが発生しない限り、専門的な知識はゼロでも対応できるのだが、酷い話では「朝ちょっと物理サーバーの状態とメールチェックするだけで一日の仕事が終わる」などと言う現場もあると聞いている。このSIer(実際はSES)の常駐員に払われるお金が年間千万円。これはもう社会保険料加味しても、年収400万円で正規職員を雇った方が、任せられる仕事も多くなるから安く上がるであろう。
明らかに委託の在り方に対する見直しが必要である。

 

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