日本人は再分配が嫌い⇨それは結局仕事ぶりにも現れている件㊁

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出世欲があるわけでもなく・・・

なぜ日本人の長時間残業は是正が進まないのか。ネットでは経営者ばかりが責められがちだが、もちろん経営者だけでなく、従業員側にも問題が多い。
そもそも日本には「社会人」という言葉はあるのに「当の社会人は会社の外の社会を知らない」という惨状がある。
今の日本には確かに自己責任の空気が万円しているが、政治的な表現をすると多くの日本人は再分配は嫌いだが、だからと言って新自由主義的なものを支持しているわけでもない。むしろ大半の政治無関心層からすれば、自由競争だの再分配の話自体が政治オタクのイミフな会話にしか聞こえてないのかもしれない。むしろ多くの日本人の価値観は単に「内集団ひいき」的なだけであって、特段政治的に何か関心が湧くようなものもなく、しかし仕事ぶりには影響しているのではないかと考えている。

さて、前ページで生産性を高めるのは次の3つであり、それらが行われない傾向があることも触れた。
㊀徹底した役割分担
㊁業務のスキーム化
㊂業務の負荷分散
もし、自由競争を重んじる立場であるなら、とにかく出世をしたさにバリバリ業務をこなし、成果を出し、とにかく同僚と競う方向を取るだろう。出世欲のあるタイプは文句をこぼさず、黙々とパワフルに業務をこなしていく。が、やはり実体験からそんな会社員を見ることは多くなく、何かしら会社に文句をこぼしながら今日も延々と残業し、有給を使わず過ごしている。もちろん会社を辞めることは無い。これはなんなのか。

会社は嫌い(面倒)だが辞めたい・解雇されても良いと思うわけでもない

政治的な面で見ると、日本人は自己責任を好む割に新自由主義的競争原理が好きなわけでもなく、しかし共助や公助と言った助け合いもまた好きではい。そして改めて会社内を見渡してみると、これまた大半が「出世したくはないけど会社を辞めたくもない」という状態にある。会社に不満はあるのに仕事は抱え込むという、訳のわからない状態に陥っている。そして後から入ってくる後輩には「嫌なら辞めれば?」的な自己責任論があったりして、ますます日本人の考えと言うのは分かり辛い。
少なくともこれまで所属してきた職場で「俺はさっさと部長になるんだー!」とか「実績作って転職して年収上げてやる!」的な野心でバリバリと仕事する人というのは、あまり見たことが無い。大半は「何となく「薄給でも良いから上に立ちたくない(現状維持)し解雇されたくもない」という惰性で働いている。その中で「●●さんじゃないとできない仕事とそうじゃない仕事を仕分けしませんか?」と言えば意外に眉間が動くものである。
よくよく会社に一人や二人はいるだろう、辞める辞める詐欺。
「残業多いし、有給取れないし、もう辞めたーい!」と口では言うものの、本心で残業無くしたいとか有給取りたいとは思っていなかったりする。
「私残業多くて頑張ってるでしょ? 有給取らずに偉いでしょ?」というのが割とホンネで、その承認欲求を満たしたいというのが目的であったりする。
自由競争が好きな立場なら会社では独占業務を増やして実績をあげ、社内での存在価値を高めるなり転職での市場価値を高めると言った方向に行くと思うが、それはしない。
再分配を好む立場なら社内の業務をスキーム化し、負荷を分散し、みんなが残業減って有給を取れるようにという方向で動いていくと思うが、解雇リスク低減のために属人化した業務は手放したくないと思っている者もまた多い。そう言ったムードを日本企業ではよく感じている。
当然組織としての生産性は上がらず、一向に減らない残業時間を巡って管理職と平社員&契約社員で攻防を繰り広げている。
まぁマクロ的な視点で見れば日本の生産性が上がらないのは需要がない(所得が上がらないから供給過剰である)ことと設備投資をしないことなのだが、ミクロ的な目線で見ると「こんな頑張ってるのに給料が上がらない・残業減らない・有給取れない私がいるからチームが回るのよ。ウフフ」的な発想が生きていて、こういう価値観が出回っているうちはやはり生産性は向上しないのだろうなと、嘆息する次第である。

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